非24時間睡眠覚醒症候群(non24,フリーラン)について詳しく。みたいな話。

いわゆる遅刻魔や、突然ドタキャンをする人、しょっちゅう夜型だったりする人で、寝てばっかりかと思えば、起きてる時期もあったり…、なんかだらしない人なのかなぁ?と感じるあの人、または自分に当てはまる〜!なんて人は、もしかしたら非24時間睡眠覚醒症候群(non24, フリーランとも呼ぶ)かも。

かくいう私もまさに、この非24時間睡眠覚醒症候群(以下non24)と20年来の付き合いになりますが、自分がこのnon24だと気がついたのはここ最近のことで、知ったからと言って治るわけではないけれど、自分が睡眠のことで悩んでいたのはだらしがなく根性がないからだと思って苦しんできたことを考えると、もっとこの病名を早くに知っておきたかったとつくづく感じています。

同じように今、睡眠の問題で悩んでいる人の参考に、そしてnon24の辛さに対する世間の理解が深まればと思い自分なりにnon24について調べたことで、特に理解されにくい症状や辛さについて記事にすることにします。

☺︎非24時間睡眠覚醒症候群(non24, フリーラン)とは。

non24とは、まだ医学界の専門分野でもかなり理解の低い、最近になってようやく認知されてきた睡眠障害の一種で、睡眠時間が30分〜1時間ずつ毎日後ろに後退していくという症状が特徴です。

それには人類の持つ24時間より少し長い体内時計が関係しているのですが、通常人々はその約25時間周期の体内時計を朝の光でリセットしています。それを概日リズムといい、そのリセット機能がうまく機能していないことを概日リズム障害と呼び、入眠起床のリズムが意志や生活習慣とは無関係に日々後ろにずれ込んでいく症状を持つ人を非24時間睡眠覚醒症候群(non24)と言います。

☺︎自分で眠る時間、起きる時間をコントロールできない。

睡眠障害がない人は、たまに夜更かしをしたり、日曜日に寝だめして夜眠れなくなったとしても、月曜などに少々寝不足で頑張って通常の生活に戻ることが可能で、自分で睡眠を調整して睡眠や体内時計をコントロールできています。
しかし、non24は自分でそのコントロールが効かず、毎日睡眠が後ろにズレていくことを意志や少しの我慢で戻すことができません。
30分〜1時間ずつずれていくということは、夜23時〜6時が体内時計の睡眠時間だった日の8日〜16日後には睡眠時間が朝7時〜昼13時に移動して、その時間を意識的に調整することはできません。
その調整できない状態をフリーランと呼びます。
勝手に睡眠時間が走っていくようなイメージをしてもらえるとわかりやすいでしょうか?

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☺︎睡眠を自分でコントロールできないのはそーとーしんどい。

そしてnon24は日常生活に大きな支障をきたします。

・普通に学校に通う、普通に会社に通う。
・いつもの打ち合わせに毎回10時に行く。
・病院の診察に予約時間にきちんと通う。

こういった当たり前のことが、予定通りにできません。
買い物に行きたくてもコンビニくらいしか空いていない時間に目がさめる時期はショッピングも楽しめません。

non24の人々は、学校に通学することや会社に行くことが、本当に大変です。
前日はどうにか7時に起きられたら、次の日は8時じゃないと起きられないのです。それでもどうにか頑張って起きて学校に行けたとしても、それで体内時計がリセットされたわけではなく、体内時計はきっかり進んでいるため、輪ゴムをどんどん伸ばしてくような感じで無理をして、いつか伸びきったとことでバチーンと体内時計に合わせて過眠が起きたりします。
このような状態でフラフラになりながら通学したり仕事に行っても、日中ボーッとしてしまい、話が耳に入らなかったり、ミスをしてしまったり。
歯医者さんへ通おうにも、予約の時間を定期的に取るのに、来週はきっと何時ぐらいが生活時間帯だから…など毎回スケジュールを立てて予約するのも一苦労で、またその予測の通りに生活するなんて至難の技です。

他にも、例えばnon24が居る家族でアミューズメントパークに行こう!という計画があったとします。
その日がうまく昼間の起床時間のタイミングと合っていれば問題ありませんが、それが昼間が睡眠時間のタイミングの時期にかぶる場合、non24の選択肢は二つです。

・短時間仮眠、寝ずに行く。(フラフラ、意識朦朧)
・自分だけ行かない。

言わば、普通の人が夜寝ている時間に遊びに行くのと同じことで、最初のうちは良くても、夕飯時には"寝ずに遊んだ人の朝"のような状態です。
また、夕方からの用事は一般の人にはなんでもないことでも、non24にとっては普通の人にとっては深夜2時からの用事と同じ状況だったりします。

それでもたまに遊びに行くくらいならどうにかなりますが、non24は普段から、あらゆる場面で昼間の時間に起きる予定があったりするので、常に疲労状態です。

一般の人は普段寝ている午前1時〜の時間帯に約束を入れたりはしないし、その時間の用事を断っても疑問はもたれません。しかし夕方4時の用事をこなしたり、昼間の用事をこなしたりすること自体がnon24にとっては、午前0時過ぎの用事を何度もこなしているようなものです。

また、行かないという選択が繰り返されると、社会から疎外されているように感じたり、行きたいところに行けない、やりたいことが出来ないという思いから、精神的に参ってくる、という状態になることも。

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☺︎理解されない。

non24が辛いのは、何よりこの理解されないということではないかと思います。
全く眠れない不眠症や、睡眠相後退症候群のように、遅い時間でもほぼ毎日同じ時間に眠れる睡眠障害に比べ、昼間起きられる時期もあり、しかし起きられない時もあるため、外部から見るとまるで怠けているように受け取られてしまいます。
学校や会社に思うように行けない。
病院に予約通りに通えない。
友人との約束を守れない。行けない。約束ができない。
(行くつもりが寝てしまい、結果無断欠勤や急な休みの連絡などを繰り返してしまう。)
そういった状態で非難されながら、頑張っても頑張っても改善しない状況は、どんどん追い詰められていくような気持ちです。


ほとんどの場合、この社会の常識では、朝起きられない人間=怠け、だらしない、甘えていると捉えられます。
朝ちゃんとした時間に起き、ある程度夜更かししても、次の日には起きて学校や仕事に行くことができて、初めて普通の人の扱いを受けることができます。
ですので、朝起きられないのは夜寝なかった自己責任であり、起きれれない人は責任感のないだらしのない人という扱いになります。
当人も、自分は甘えているんじゃないか?と常に自分を卑下しながら、それでも起床に対し多大な労力を使い努力していることがほとんどです。
しかし、遺伝子が関係していることや、体内時計を修正する機能が働かなければ、意志の力で解決する可能性は少なく、それでも外野から求められるように意志や努力で改善しようとすれば、いつしか精神的に疲労し、多くのnon24はうつ症状を呈します。

重要なことは、自分の意志や努力の問題ではないということです。
このことは最近になってようやく遺伝子の問題であるという研究結果が発表されnon24はただ生活するだけで、24時間社会では生活リズムが破綻しやすいハイリスク群であるとわかっています。

(独)国立精神・神経医療研究センター・三島和夫部長らの研究グループが、睡眠リズム異常の原因を解明

このような症状を甘えや精神論で論じやすい学校生活では、不登校となりやすく、現在暗に睡眠障害を抱えた子どもたちが、理解されることなくダメな子というレッテルを貼られ、学業の道を閉ざされているというのが現状です。進学の道も険しいものとなるでしょう。

また人間関係に対しても、甘えと捉えられるのを恐れ、自分が起きられないことや昼夜逆転が起こりやすいことを、non24と理解していない場合は特に、non24を理解している場合でも、言いにくい、話しにくいと感じてしまいます。
友人や知人は、当人がそのことで悩んでいることも知らずに、世の中の常識から考えてだらしないというように映り、徐々に関係を継続させることが難しくなるのではないかと思います。

また、家族の干渉を受ける時期の子どもや青年期のnon24は、親から起きられないことを責められることも多く、否定されながら成長するため、自己肯定感が低くなり、親兄弟から見られているのと同じように、自分はダメな人間だと思ってしまいがちです。
自己肯定感の低さは、生きる力に直結します。無気力で向上心が持てず、人生に対して受け身になり、希望を持たない大人へと成長してしまう可能性も大きいです。

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☺︎うつの併発

上記の理由により、24時間の社会にnon24が無理をして合わせようとした結果、まだ世の中からの誤解による偏見などにより、当人はうつを併発する確率が非常に高くなります。

それから、日中の活動を無理をして続けていたりする場合、元気な時とだるくて何もできない時の波が多くなり、自分自身がその波に疲れてしまったり、昼間に活動したいのに夜間の目覚めを余儀なくされ、虚無感などに苛まれて生きる気力を失ってしまうこともあります。

うつは原因を取り除く、または向き合って乗り越えることができれば自然と良くなると私個人的には考えていますが、non24はまだ診断できる病院も非常に少なく、治療法もきちんと確立されていない手探り状態で、現段階ではnon24を克服するのは難しいという現状もあって、二次的な問題であるうつの治療は非常に難しい問題です。

ですから、現時点で何より大事なことは、家族や身近な知人がまず理解し、あらゆる改善方法を共に試したり、協力していくという姿勢を見せること、またnon24を理解し考慮される社会になるように、当人以外の人も理解していくということだと思います。


☺︎ADHDとうつとnon24の関係

ところで、私はADHDでうつモードを持っているのですが、ADHDとこのnon24は遺伝子の問題で、尚且つADHDとの関係性も疑われているとのことで、non24の症状がうつを引き起こすことも多く、3つの問題はかなり密接に関係しているのではないかと思っています。

しかしADHDとnon24の関係はまだ可能性が疑われているレベルなのと、私は当てはまるというだけで、根拠にまだ乏しいため、今回はADHDとの関係に関しては割愛します。
一応、ADHDとの関係を訴える書籍等があり、詳しく書かれているサイトがあり、このサイトは素晴らしい情報量で参考になると思いますので、リンクを貼っておきます。
いつも空が青いから。(なぜADHDの人は寝つきが悪いのか―夜疲れていても眠れない概日リズム睡眠障害になるわけ)

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☺︎治療方法


現段階で治療方法に関しては、確実に効果があるといわれるものはなく、メラトニン(ロゼレム)の投与や高照度光治療なども、他の睡眠障害よりも効果が少ないと言われています。
また、入眠導入剤や睡眠薬では体内時計は戻りにくく、結果的に過眠になり起床時間は変わらなかったり、そのズレを調整するために慢性疲労状態に陥ってしまうこともあります。

追記:光療法は強いルクスの光を浴びて体内時計を変えようと言う療法ですが、もしかしたら光に過敏すぎるという可能性もあるようです。
non24で、人よりも光が眩しく感じる場合、夜間の屋内やコンビニ等の光の影響を受けすぎて体内時計が狂っているという可能性もあるようです。
夜の電気を極力減らすことで改善した例もあるそうです。

また、こちら「糖質制限でうつ病が治った話|草木|note」というnoteに掲載されている漫画ではうつ病糖質制限で直した過程で、併発していたうつ病も治ったという例が挙げられています。
タンパク質の不足が原因か、糖質によるものが原因であったかまでは判断できないものの、こういう改善例もあるということで掲載しておきます。


同時に、併発するうつに対しては向精神薬などを飲みながら生活するような提案が医師からなされることもありますが、それはあくまで対処療法であり、大元のnon24が完治しない限り、うつの原因を取り除けてはいないと考えます。

また、現在、専門的知識を持った医師でなければ、この症候群の病名すら知らないという医師も多くいます。そのため、本来はこの病が元になってうつを発症しているにもかかわらず、うつが原因の睡眠障害と捉えられたり、また適応障害のような誤解を受けたりします。
日本睡眠学会の認定医一覧を掲載しておきますので、専門機関を受信したい場合の参考に。

日本睡眠学会 - The Japanese Society of Sleep Research




SNSの掲示板などでは、同じnon24当事者同士が自分なりの方法を試し、情報交換などをしていますが、現段階でnon24を診ることができる病院がとても少なく地域も限られていることを考えると、non24自らが情報を探し知識をつけて試していく力も必要かもしれません。


☺︎さいごに。


とにかく何度も書きますが、このnon24の辛さは「自分でコントロールができないこと」です。
"頑張って起きる"ということを一つ取っても、24時間に体内時計をリセットできる人とできない人では、"頑張る"の度合いが全く違います。

私の感覚では
腕立て伏せ、20回と100回くらいの違いです。(女子をイメージ)

今の教育や社会では、みんなが平均的に同じくらい同じことができるべきで、それ以上に才能があることを望まれます。
しかし、できないものを認め、できることを伸ばす教育、そしてできることを評価する社会に向かっていかなければ、できないこと一つで、人の人生がすべて社会常識に潰されてしまうのはとても残念です。

そして、non24を抱えている方に伝えたいことは、起きる努力をして疲弊するよりも、non24であっても評価される場所や仕事を探し、それを評価されるための努力はちゃんとしながら、少しずつでも改善する方法を探るのが良いと思います。

それから、以前全く知られていなかった頃よりもずいぶんと、non24に関する情報は増えてきたように思います。
10年前までは、完全に甘えで片付けられてきたこの苦しみが、今は病気として(もしくはタイプとして)理解されつつあります。
ですので、周囲に自分がnon24で苦しんでいることを伝えることを諦めないでほしいと思います。
また、non24であるからといってダメな人間ではないということを理解し、自信を持って自分の才能のある分野を伸ばしてほしいと思います。

私はnon24に関する情報を集め、印刷してかかりつけ医に相談し、近所で一緒に考えてくれる医者を見つけることができました。
専門外ではあっても、ある程度情報を共有した上で色々と新しい手法を試してくれるお医者さんはいます。

私は今回、医学的な治療法よりも、世間への理解を深めることを目的としてこの記事を書きました。
non24は、24時間社会の中では障害に当てはまるのかもしれませんが、それはあくまでも、24時間社会での話であり、それを引け目と感じなくて済むような、そういうタイプの人が存在するという考え方で理解が広まってくれることを願っています。


(また、書き足りないことや、新しい情報があれば、この記事は追記していきたいと考えています。)